書籍紹介

日本人の心得

裁判員になったら読む本

弁護士 岩井 重一 [著]

裁判員制度はなぜ生まれたのか?
すべての日本人が知っておきたい、新しい社会のルール

なぜ裁判員制度は生まれたのか。

「裁判員制度」をめぐってはいまもさまざまな議論が行なわれていますが、この制度が生まれた背景や制度に込められた意義、目的を知らない人が少なくありません。

本書は、東京弁護士会会長、日本弁護士連合会副会長を歴任し、司法制度改革の指針作りに携わってきた著者が、日本の歴史と世界の司法制度の趨勢を押さえつつ、裁判員制度がこの国に誕生した背景と理由についてまとめています。

日本では刑事事件で検察に起訴された人が裁判(第一審)で有罪となる確率は99・9%に及びますがこれは世界でも類を見ない、異常な高さです。なぜこれほど高い有罪率が保たれてきたのか。数字の裏にある司法の実態を明らかにし、新たな裁判制度が長く、待ち望まれてきた経緯をわかりやすく丁寧に解説しています。

最大の特長は、裁判員制度の概要だけではなく、「そもそも法律とは何か」、「刑事法と民事法のちがい」といった基本的な話題にふれ、法律を学ぶ機会のない多くの日本人に、憲法が保障する民主主義、国民主権など根本的な国のあり方について丁寧に解説しているところです。その一方で、社会経験を持たない裁判官の日常生活や、独自の組織によって自治を守る弁護士会の実態などにもふれ、日本の司法が抱える具体的な問題を指摘。なぜ市民の目と声が直接届く、新しい司法制度の実現が求められてきたのかをやさしい言葉で解説します。

ともすれば国民の負担や「義務」の重さばかりに目が行きがちな裁判員制度ですが、本書は国民一人ひとりがこの国のあり方に責任を持ち、よりよい国にしていくうえで重要な「権利」でもある、という側面にもスポットを当てて論を展開。法律の知識を持ち生活の中で活用することや、刑事裁判に参加し判決に責任を持つことは、すべての日本人が身につけるべき「心得」であると著書は伝えています。

37年間にも及ぶ弁護士としての活動実績と、弁護士会のリーダーとして活躍してきた著者でなければ語れない、熱いメッセージの数々。すでに裁判員候補に選ばれた人も、まだ選ばれていない人も、裁判員になる前にぜひ読んでおきたい、日本人必読の一冊です。