ごあいさつ

数ではなく価値を追える出版社を

CK Publishing を作ったわけ

代表 石原 明

経営コンサルタントとして、業界を問わず経営指導をさせていただいている私が言うのも問題かもしれませんが、出版社の経営というのは、流通その他、マーケットの特殊性などの事情もあり、本当に難しいものです。

一般的な出版事業で、会社を維持して行ける売上げを上げ続けるためには、どうしても「数を追う経営」をせざるを得ません。

つまり、なるべく大衆受けするタイトルや内容の「売れやすそうな」本を作る、それもできるだけ短期間・低コストで作り、ハイペースで数多く出版し、総発行部数を伸ばして行く…という経営をしなければ、出版社として生き残って行けないのです。

しかし、当社は、「数ではなく価値を追う」本作りをすることを目的に設立された出版社です。

本の内容に納得いかなければ、必要なだけ出版を遅らせますし、(幸いこれまでにはなかったことですが)場合によっては出版を取りやめることすらある…という、一般的な出版社とは、かなり違うスタンスで本作りを行っています。

こういうことができるのは、当社が経営コンサルティング会社を母体に持ち、本の販売による売上げのみで経営を維持することを考えずに、本作りに集中できる体制を取っていることも要因のひとつです(もちろん、プロとして真剣に経営していますので、赤字は出していませんが)。しかし、当社が「価値を追う本作り」を続ける何よりも大きな理由は、「本」という存在そのものに対する思いからだと思います。

当社を設立する前から、私には、もともと「本」に対して、強い思い入れありました。

それは、私がこれまでに、すばらしい本との出合いによって、考え方や生き方に大きな影響を受け、人生が大きく変わったという経験をさせていただいて来たからです。そういうすばらしい本を書き残してくださった方々に対する、大きな感謝があります。

そういう気持ちがありますので、自分自身もできる限り価値のある本を残したいですし、また、自分以外の誰かが、読み手に感謝されるようなすばらしい本を生み出すことに、何かの形で携わりたいと思い続けてきました。

同時に、私は経営コンサルタントですので、「本」という商品の位置づけや価値にについても、コンサルタントとしての視点を持って見ています。「商品」としての本には、ある非常に変わった特徴があります。それは、「値段が価値とリンクしていない」ということです。

一般的には、モノの値段はその価値に応じて決まるものです。あまりに未成熟なマーケットであるとか、売り手に悪意でもない限り、高い値段で流通しているものは相応に質が高く、値段の安いモノはそれなりのもの…という見方をして大きく失敗することはまずありません。

しかし本にはこのロジックが通用しません。内容が非常にすばらしくても、その分だけ値段が高いということがないのです。これには日本の「本」の流通形態の特殊性や、一日300冊近い新刊書籍が発行されるといったマーケットの環境によるところが大きいと思いますが、少なくとも私は、「自分の人生を変える程の、大きな学びが得られるような商品が、1500円足らずの金額で買える」という例を、本以外に知りません。

それでは、本の価値とは何でしょうか? 例えば、「読み手が1500円以上の価値を感じれば本として成立するのか?」というと、私は、そういうものではないと思うのです。

本は、その著者の方が亡くなった後にも残っていくものです。インターネットが普及してから、コンテンツの価値が全般に浅くなっているように感じますが、インターネット上のコンテンツには、低コストで広く、早く伝達されることに価値があります。それと違って、著者や本作りに携わる人間の強い思い(本を書く、作る、というのは、本当に大変なことです)や、高い問題意識によってまとめ上げられ、何度も磨かれて生み出された本には、何十年も、何百年も色あせずに残るような、その本だけにしかない価値があるのです。

「著名人が編集者のインタビューに2時間答えてそれをまとめる」というような本の作り方もあるのかもしれませんが、私は本として、より価値のあるものを書きたいですし、作り続けたいと思っています。そして、そういう本を作ってくださるすばらしい方々に、本作りという仕事を通して、これからも出会って行きたいのです。

Pick Up  『日本人の心得 裁判員になったら読む本』

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