CK Publishing | 『広告禁止!ネット不動産進化論』著者・金丸信一さんインタビュー
著者インタビュー

今、不動産ビジネスは次世代型に進化すべきだ!<前編>

『広告禁止!ネット不動産進化論』著者
 リングアンドリンク株式会社 代表取締役 金丸信一さん

9月3日に、ご自身3作目の著書にあたる『広告禁止!ネット不動産進化論』を出版されたばかりの金丸信一さん。「何でもできる技術屋集団」の異名を持つリングアンドリンク株式会社の経営者でもある金丸さんが、いったいどんな想いで本書をお書きになったのか…。

埼玉県所沢市にあるリングアンドリンク本社にて、たっぷりお話をお伺いしてきました。大変貴重なお話をお聴きできたので、インタビューの内容を前編・後編の2回に分けてお届けしたいと思います。

「みんながやらない仕事」「他ではできない仕事」ばかりをやってきた

― まずは素朴な疑問から。設備メーカーの経営者でありながら、不動産業界に向けての本を3冊も出版されるというのは、かなりユニークな存在のように思われますが…。

金丸 昔から人と同じことをするのが大嫌いなんです(笑)。これは自分の欠点だと思ってるんですが、忘れもしない小学校卒業の時。当時は記念のサイン帳をクラスメイトに回して、みんなにひと言書いてもらうっていうのが流行ってましたよね? それが自分一人だけ出来なかった…本当はすごくやりたかったのに、みんながやってることをどうしても一緒に出来ない…自分はそういうタイプなんですね(笑)。

うちはもともと父親と母親の2人でやっていた金型メーカーだったんですが、そこへいわゆる2代目というかたちで私が入社しました。仕事においても、「みんながやらない仕事」つまり「他ではできない仕事」ばかりを好んでやっているうちに、ちょっと異色な会社になってしまったみたいです。自分が30代の頃までは、それこそ「最先端技術」に向かって一直線でした。トルク変換機やレーザー測定器、画像処理システム、透過率計などの開発に成功したり、科学技術庁の補助金を受けて動脈硬化治療用レーザー発振器なんかも作っていたんです。思いつくものは、なんでもチャレンジしましたね。ともかく「出来ません!」のひと言を言うのがとっても嫌だったんです。

― そんな御社が、不動産業界向けのパッケージソフトを開発することになった経緯を教えてください。

金丸 あの頃(1995~96年当時)は新製品開発に燃えていて、いろんな方面にアンテナを張っていたんですね。ちょうど世の中に「インターネット」なるものが登場した頃の話です。当然ネットビジネスも視野に入れてリサーチしてました。まもなくITバブルが生まれ、渋谷は「ビットバレー」なんて呼ばれて、IT長者たちがブイブイ言わせてた時代。そうなると自分はそこへ入っていこうとは絶対思わないタイプですから、ビットバレーを横目で見ながら、黙々と機械を作っていました。

そんな折、とある取引先から「工場で使っている複数の装置のデータを、ひとつのパソコンでまとめて管理できるようにしてもらえないか」という相談を受けたんです。それぞれの装置はみな別々のメーカーが別々の「言語」で開発したものですから、普通に考えれば、結構難しいことなんです。ところがうちは、「オーダーメイド」が得意だったので、どんな言語にも対応できた。「出来ますよ」って言ったらすごく喜ばれたんですね。そのうち、そのお客さんは「このデータを本社でも見られるようにできないか」って言い始めたんです。これはもう「インターネット」の世界ですよね。

当然その依頼も受けたわけですが、その仕事をやりながら「ちょっと待てよ。こんな仕事をできるのはうちだけかもしれない!」って気がついちゃったんです。もちろんひとつひとつを出来る会社はたくさんありますし、多額の投資をして独自にシステム開発すれば話は別ですが、アプリケーションソフトで、「データベース」と「ネットワーク」と「インターネット」の3つすべてに対応できるものは世の中になかったんです。われわれのこの技術を活かせる業界がきっとあるはずだ…そこからあれこれと探していきました。

不動産業ほどネットと親和性の高いビジネスは無い

― そこで見つけたのが「不動産業界」なんですね?

金丸 そうなんです。不動産会社は小規模の会社が多いですから、独自のシステム開発よりパッケージソフトに向いています。しかも、不動産の物件探しには、インターネットを使うとものすごく便利なはずです。私は不動産業ほど、ネットと親和性の高いビジネスは無いと思っているくらいです。さらに、ローカル(ネットに繋がない状態)では、顧客情報も物件情報も、「データベース化」していく必要もあります。ですから「不動産業界」でこそ、われわれの技術を存分に発揮できると考えたわけです。そこから一気に不動産営業支援システム『@dream(アットドリーム)2000』の開発に着手し、2001年9月に『@dream2000賃貸版』をキャノンシステムアンドサポート株式会社から発売することができました。

しかし、当時の不動産業界は、まったく別の方向を向いていました。いわゆる「ポータルサイト」が全盛だったんです。どうして不動産会社が一斉にそこへ向かっていったかと言えば、「インターネット=広告」だと考えていたからです。このあたりのことは、私の最初の本『街の不動産屋さん“待ち”の経営から抜け出す』に詳しく書いているのでよかったら参考にして欲しいんですが、私は当初から「インターネット=広告」という考え方は大間違いだと思っていました。

ネットは『探して・調べて・比べる』ツールなんです。冷静に考えてもらえばわかるはずですが、ご自身でネットを「広告」のように使ってますか? 私は主に「調べる」ときに使いますし、きっとみなさんもそうだと思います。ですから、私はこの8年、不動産会社に向けて「ネットに対する考え方を変えてください」と叫び続けてきました(笑)。

― 最近の不動産業界はかなり変わったとお感じですか?

金丸 基本的にはあんまり変わってません(笑)。不動産業には「自然需要」がありますから、待っているだけでも、それなりに仕事が発生します。不況不況と言われるなかでも、ものすごく強い業種なんですね。さらに収益性の高い仕事でもあるので、ひとつ大きい物件を決めれば一息つけますよね。ですから、業界の体質はそう簡単に変わらないと思っています。しかし、ありがたいことに、われわれのソフト『@dream』のユーザーさんたちは、かなり高い意識を持ってくれていますので、彼らがオピニオンリーダーとなって業界を変えてくれるかもしれないな、という手ごたえを感じているところです。

― そう考えると『@dream(アットドリーム)』が不動産業界に与えた影響は大きいわけですね?

金丸 パッケージソフト自体が影響を与えたかどうかは別として、われわれの仕事への取り組み方が不動産業界に多少なりとも影響を与えているとは感じています。まずわれわれが一番大事にしているのが「サポート」です。発売当初から専属の『ITサポーター』を付けて、「ソフトの使い方やホームページの運営でわからないことがあったらいつでも電話してきてくださいね」という体制を取ってきました。今では12名を超す『ITサポーター』たちが活躍してくれてますが、売りっぱなしにせず、サポート体制を整えているからこそ、他のパッケージソフトと決定的に差別化できているわけですし、それがわれわれの「顧客化」戦略でもあるんです。

さらにわれわれはメーカーですから、工場では「生産性」を追及するのが当たり前です。なんとか製品の歩留まりを良くして、少しでも早く完成させようと日夜考えます。不動産ビジネスで言えば「成約率」に当たる部分ですよね。最初、不動産業界と知り合って一番びっくりしたのが、彼らに「生産性=成約率」を気にする発想が少しもなかったことです。普通、チラシを撒いて集客したお客様の成約率は約割と言われているんですが、それを3割・4割にしようとは考えないんですね。人材の教育もあまりしませんし…それが私には不思議でしかたありませんでした。

一方、インターネットから来るお客様は十分調べてから選ぶので、その成約率は5割以上、メールで追客すれば8割にもなることがわかっています。これだけ成約率が上がれば、仕事の生産性も飛躍的に上がりますよね。このことをわかってもらうために、年間何百回と勉強会や講演会を開催し、この8年間、唾を飛ばしながら一生懸命お伝えしてきたんです。立場的には、いつのまにか経営コンサルタントのような役目になってしまったなと思ったりしています。

― 不動産業界を含め、ネットビジネスを取り巻く環境は、まだまだ変わるとお考えですか?

金丸 ご存じのとおり、ここ10年でインターネットの普及率は飛躍的に伸びました。当初オタクと言われるような「特別な人」だけが使っていたインターネットがどんどん家庭内に入ってきて、今の若者は、家に居てもテレビよりネットを見ている時間が長いんじゃないでしょうか。そうなると、サービスを提供する側も考え方を変える必要があると思います。

先ごろ、リクルートが不動産・住宅仲介サービス「SUUMO(スーモ)」をスタートさせましたが、このサービスをよく検証すると、あのリクルートでさえ「広告のようにホームページを使うだけではもう商売ができない」ということに気づいたんだな、とよくわかります。スーモは単なる物件情報を掲載しているサイトではなく「生活全般のポータルサイト」を目指しているんですね。つまり、これまでのイサイズやフォレントのように、加盟店から手数料を取ってサイトを運営していくという、ネット完結型のビジネスモデルじゃないんです。サイトはあくまで集客ツールとして使うだけで、実際に収益を上げるための実業には、ちゃんと「人」が介在しないと無理なんだと気づいたということです。

私は、リクルートという会社を、いつも世の中の大事なところを露払いのように示してくれる会社だと思って見ているんですが、雑誌をいちはやく「無料」にしたのもリクルートでしたよね。「R25」が創刊したときには、雑誌社は口を揃えて「それは反則だろう」って言ってました。さらに最近では、新聞を取らない家庭も増えたので、独自のポスティング事業を実験しはじめたりしています。私は10年前から「赤字の新聞社は新聞をタダで配ればいいのに」って思ってたんですよ。タダにして巨大な「顧客情報網=データベース」を作って、その後で、チラシなどのポスティング事業で収益を上げればいいんです。しかし、新聞社にはそんな発想は到底できるはずもありません。要は、これからの日本においては、「良質の顧客データベース」を持った企業に軍配が上がるに決まってるんです。本書にはそのあたりのこともたっぷり書いたのですが…。

― まだまだお話が尽きないので、この続きは「後編」でお届けしたいと思います。どうぞ楽しみにお待ちください。(インタビュアー:鈴木ようこ)

金丸 信一(かねまる・しんいち)

東京都杉並区出身。埼玉県所沢市にあるリングアンドリンク株式会社 代表取締役。父親の経営する金型工場を、生産技術部門中心のシステム開発メーカーへと発展させる。90年代後半よりインターネットビジネスを研究し、2001年に不動産営業支援システム「@dream(アットドリーム)」を発売。以後、700回を超える講演、執筆、各社顧問及び幹部教育などで活躍中。

ホームページの制作に終わらない運営方法、メール営業手法、不動産会社の組織化など、ソフトウエアの提供だけでなく、徹底的にサポートすることによって成功に導いた不動産会社は全国に多数。それまで結果の出ないソフトウエアしかなかった不動産業界において、数少ない結果の出るシステムと絶賛されている。

全国各地で行われるインターネット不動産アカデミー、@dream操作講習会、ユーザー会、@dream大賞などをキヤノンシステムアンドサポート株式会社と共同で企画し、年間数千名の不動産業者が参加している。これらのインターネット不動産勉強会は、実際に成果を出した不動産会社が、自社の事例を余すところなく発表することでも有名。

2005年に上梓した『街の不動産屋さん“待ち”の経営から抜け出す』は、インターネット時代の不動産業務を初めて具体的に記した業界初の著書。翌06年には『インターネット不動産経営~勝つための11のセオリー~』にて、全国各地の不動産会社のインターネットでの取り組みを紹介した。

@dream公式サイト: http://www.at-dream.jp/
オフィシャルブログ: http://blog.at-dream2000.jp/